隠密日記

  1. 男は急いでいた。
  2. 今日は鍵開け当番。
  3. 早く行かないと、誰かを待たせる事になるかもしれない。
  4. 彼は、愛車のイグニッションをひねり、キックを入れる。
  5. 「フォーン」
  6. 甲高い音を立て、吹けるエンジン。
  7. ギアを1速に入れ駆け出す。
  8. 男はふと異変に気付いた。
  9. 「腹が痛い。」
  10. この寒さのせいで冷えたか。
  11. 走っていると余計に冷えるせいか、加速する腹痛。
  12. やばい・・・
  13. その時、急激にバイクはスピードを落した。
  14. 「何!?」
  15. 止まるエンジン。
  16. 「くっ、こんなところでエンスト・・・」
  17. 加速する腹痛。
  18. 焦ってキックを入れる男。
  19. 「かかった」
  20. 妙に甲高い音を立てて吹けるエンジン。
  21. 男は一気に加速し、走る。
  22. 「あと少し・・・」
  23. あとカーブ2つで会社だ。
  24. またもや、急激にバイクはスピードを落した。
  25. 「ぐわっ!?」
  26. 彼の腹痛は限界に来ていた。
  27. しょうがなく、バイクをおしながら会社に向かう男
  28. あと、少し。
  29. あと、少し。
  30. 呪文のように唱えながら、急ぐ。
  31. 「着いた・・・」
  32. 男は会社の前にバイクを放り出すと、一目散に会社へ飛び込んだ。
  33. ・・・
  34. 彼は勝ったのだ。
  35. その後、何気なくバイクのタンクを叩いて男は気がつく。
  36. ・・・ガス欠かよ
  37. と。